
実務者研修のちょうどその日に誕生日の生徒さんがいて、いつものように小田急デパートの地下に入っている高野フルーツパーラーにケーキを買いにいきました。私が好きであり、またケーキらしいケーキということで、いつもイチゴののったショートケーキを買うことにしています。「Happy Birthday!」と記されたチョコレートでできた小さなプレートに、生徒さんの名前を入れてもらって、添えることにしています。湘南ケアカレッジには、先生方と生徒さんたちの誕生日を祝うというイベントがあり、学校に来ている期間中にたまたま誕生日が当たった場合、バースデーソングを歌ってもらい、誕生日ケーキを贈られ、クラス全員から祝福してもらいます。湘南ケアカレッジに来て良かったと、先生方や生徒さんたちの思い出に少しでも残してもらえるように考えたイベントです。そのための小道具としてのショートケーキです。
今回、驚かされたのはショートケーキの値段です(笑)なんと税込みで890円もしました!1個のショートケーキが、あとひと声で1000円に届こうとしているのです。誕生日イベントは湘南ケアカレッジが開校した2013年からずっと行ってきましたので、かれこれ10年以上、私は高野フルーツパーラーでショートケーキを買い続けていることになります。今でも覚えていますが、10年前はショートケーキ1個が500円台でした。ところが最近の値上げブームもあって、いつの間にか700円台となり、ついに800円台、いやもう900円と言っても良い価格まで上がってきたのです。うすうす感じてはいたのですが、890円になっていよいよ高い!と感じてしまいました。誕生日にケアカレに来てくれてありがとう!という気持ちを伝えるために、ほんの気持ちとして買っていたショートケーキが今はもう1000円する時代に変わったのです。
この誕生日のお祝いのイベントは、私がかつて関わっていた子どもの教育現場での出来事がきっかけとなっています。そこでは生徒さんの誕生日にカードを書いて渡すということを行っていたのですが、最初はあまり大したことと私は考えておらず、そうすると決められているからやるという気持ちでした。正直に言うと、授業の内容を見直すとか生徒を集めるために営業するとか、他にもっとやるべきことあるんじゃないのと思っていました。
ある中学校2年生の女子生徒の誕生日がやってきました。仕事のひとつとしてメッセージを書き、カードを渡し、おめでとうと伝えたところ、「こんなことしてくれるなんて嬉しい!すごくいい学校だね!」と思いのほか喜んでくれたのでした。普段はあまり感情を表に出さず、何を考えているのか分かりにくいタイプの女の子でしたので、彼女が満面の笑みで素直に嬉しいと言ってくれたことに私は驚きました。誕生日を祝ってもらうということは、これほどに嬉しいことなのだと。人の気持ちを想像することさえできなかった自分の底の浅さを思い知らされたのでした。
それ以来、どんな場所にいても、誕生日を祝うというイベントを自ら積極的に行うようになりました。大手の資格スクールにいたとき、先生たちの誕生日を祝うのはいいけど人数が増えるとできなくなるよ、カード代は誰が払うの?生徒さんの誕生日を祝うなんてもっての外だと反対されましたが、先生方の誕生日にカードを送ることは押し切って始めました。そんなことしてどうすると言う人に、中学2年生の彼女の笑顔と感情をいくら伝えても完全に理解してもらうことは難しいのですが、世の中にはお金や効率よりも大切なものはたくさんあると思うのです。それは誰かに喜んでもらうことであったりするはずです。
バースデーソングを歌って、ショートケーキを渡したときの生徒さんの嬉しそうな笑顔を見たとき、1000円なんて安いものだなと思いました。決して強がりではなく(笑)、こういうことにお金を使うべきなのだと思うのです。誰かに喜んでもらったり、誰かを助けたりするためにこそ、お金は使われるべきです。お金を奪い合うことでもお金は回りますが、それは悪循環にすぎません。それよりもお金を良い形で使うことで経済を回して、好循環をつくっていきたいものです。理想論かも知れませんが、せっかく自分で介護の学校を立ち上げて、誰かにお伺いを立てることなくショートケーキを贈ることができるようになったのですから、せめて湘南ケアカレッジの中だけでは良い形で経済を回していきたい、そう改めて思わせてもらいました。