セカンドライフ

ここ最近、セカンドライフについて話を聞くことが増えてきました。ここでいうセカンドライフとは、第二の人生、つまり、今まで続けてきた仕事を辞め、違う業界や仕事に移り、新しいことにチャレンジすることを意味します。やりたいと思っていたけれどできなかったことをやりたい、これまではパソコンと向き合う仕事ばかりだったけれど、次は人と向き合う仕事がしたいなど。定年になるまでに、まだ自分に体力と気力があるうちに、少し早めに介護の世界へ一歩を踏み出そうとする方が多いようです。年齢的にも、自分の親に介護が必要になって介護の世界と接点ができたり、介護が身近に感じられるようになってきたことも大きいのではないでしょうか。

先日の説明会にいらっしゃった男性は、救命救急士の資格を持って働く公務員でした。セカンドライフとして民間救急の介護タクシーを開業しようと考えているそうです。救命救急士は緊急度が高い仕事が入ってくることが多く、何かあったときに(たとえ自らに非がなかったとしても)怒りや批判の矛先が救命救急士に向くことも増えており、精神的ストレスが高くなってきているとのこと。また、ボディメカニクス等を知らずに移動・移乗を続けていたことで、身体(特に腰)を痛めてしまったりする救命救急士も多いそうです。そうした中、このまま定年まで仕事を続けられるのかという不安やその後の長い人生を考えると、早めにセカンドライフに移行した方が良いと判断したとおっしゃいます。

 

どこかに所属して働きたい人にとっても、介護の世界はセカンドライフに適していると思います。第一に門戸が広い。他の業界ですと、年齢で弾かれてしまうことが多いのですが、介護業界は慢性的な人手不足もあり、たとえ50代であっても正社員としての採用が当たり前です。介護職として3年経験を積めば、国家資格試験を受けることができ、あっという間に介護福祉士になれます。入りやすく、キャリアップもしやすい業界です。そして気がつくとベテランと呼ばれるようになっています(笑)。

 

懸念材料としては、前職よりも給与が下がってしまうことでしょうか。介護職員初任者研修を持っていたとしても未経験の場合は、年収が300~360万円あたりからのスタートになりますので、収入が減ってしまうケースがほとんど。中には半減してしまうという方もいるかもしれません。それは新しい世界に踏み入れる際はある程度仕方ないことですが、これも長い目で見るとそう悲観することでもありません。

 

というのは、介護の世界は自身が健康であれば定年がありませんので、70歳を越えても働き続けることができます。今の仕事の方が定年までは給与は良いかもしれませんが、定年になった途端に仕事がなくなるか再雇用という形で給与は半減し、しかもいつまでその仕事を続けられるか分からない状態になります。そう考えると、介護の仕事は稼げる期間が長くなる分、生涯全体としての収入は大して減らないというか、むしろ増える可能性さえあるのです(と卒業生さんが教えてくれました)。年金と介護の仕事による収入の両方を得ながら生きていける方が安心ですし、健康的なのではないでしょうか。

 

 

私はこれから50歳を迎えようとしています。まだ差し迫ってセカンドライフを考えているわけではありませんが、いずれ訪れるステージとして、先輩方の意見や考えを知っておくことは大切だと感じています。かつては他人事だと思っていた老眼の話(小さい文字が見えないなど)や夜の早い時間から眠くなる(遅くまで起きていられない)などの問題も最近は自分ごととして体験するようになりました。私たちの人生は常に前に向かって進み、誰にとっても平等に老いや死はやってくると悟らざるを得ません。私たちの前を行く先達が何を考え、どう生きるのかを知っておくことは、自分の未来をどう考え、どう生きるのかにつながるのです。介護の仕事も同じではないでしょうか。私たちは先輩方を介護することを通し、自分のセカンドライフの一部をいち早く見て知って、ある意味において体験させてもらっているのです。