卒業生さんの未来

5年前に卒業した実務者研修の生徒さんから、お手紙をもらいました。初任者研修から実務者研修と通ってくれると、計22日間、共に時間を過ごすことになりますので、さすがに顔と名前が一致しますし、お互いにその人となりも分かってきます。そうした中で、卒業した後もやり取りが生まれたり、何らかの形でお付き合いさせてもらったりという関係ができることもあります。卒業したらそこではい終了ではなく、せっかく袖が触れ合ったのですから、たとえ細くても縁がつながっていくことは嬉しいものです。むしろそうした人と人の心のつながりこそが、学校にとっても先生方にとっても、最終的には最も価値あるものではないでしょうか。

 

前置きが長くなりましたが、お手紙をいただいた卒業生さんは、実は実務者研修しか通っていません。その当時は横須賀にお住まいだったので、初任者研修は遠すぎて通えなかったのかもしれません。実務者研修のわずか7日間だけで仲良くなれるのは滅多にないことですから、(良い意味で)珍しい関係として私の中で捉えています。彼女は実務者研修を修了したあと介護福祉士を取得し、その後、結婚を経て、旦那様の実家がある広島の呉に引っ越してしまいました。引っ越しのメールをいただいたとき、私もかつて仕事で広島に住んでいたことがあり、広島話で盛り上がりました。

 

一昨年、こちら(東京)に出てくる用事があり、その足でケアカレに立ち寄ってくださったことがあります。彼女は普段、着物で生活しているらしく、かなり寒い時期だったにもかかわらず、着物を重ねて現れたのには驚かされました。「寒くないのですか?」と声をかけると、「意外と温かいのです」と彼女は答え、「そして夏は涼しいですよ」と付け加えました。もしかすると、日本の気候に着物は合っているのかもしれないとふと思いました。私たちは生まれたときから洋服を着て育ってきたので、(特に男性は)着物を着て生活したことがほとんどありませんが、いざ着てみると快適なのかもしれませんね。彼女に着物は似合っていて、何よりも周りに流されることなく、自然体で自分が着たいものを着るという凛とした意志が素敵だと感じました。私たちは着ている物からすでに誰かに押し付けられていて、周りの目ばかりを気にして生きていることに気づかされました。せっかく広島から来てくださったので、近くのお魚が美味しい定食屋でご馳走させてもらいながら、卒業後の数年間に起こったことや、呉での生活について遅くまで聞かせてもらいました。

 

彼女は今、子どもが生まれ、新しい土地に移って生活しているそうです。子育てをしながら、介護の仕事(デイサービス)をしています。通所介護計画を作成していると、実務者研修の中で学んだ介護過程の作成を思い出すそうです。作成に行き詰まると、クラスメイトたちと交換したそれぞれのプリントを見返し、こういう視点から長期、短期目標を立ててみようと気づく、お守りのようになっている、と嬉しいことを書いてくれました。

 

職場にときどきお子さんを連れていくと、デイサービスの91歳の利用者さんが、「この子は毎日1つずつできることが増えていくけれど、私たちはできないことが一つずつ増えていく。だからできることをできるだけ減らさないよう、週1でここにくるのが楽しみ」とおっしゃったそうです。育児の息抜きに始めたのが、今は介護の仕事が楽しいと思えるそうです。

 

 

彼女の視点や考え方はとても純粋で新鮮で、生徒さんたちが卒業後にどのような想いで仕事をしているのかを代弁してくれている気がします。私たちが思い描いていた卒業生さんの未来が彼女を通して見えてきました。これからも彼女の人生が幸せであることを、遠く離れていても心から願っています。

実務者研修の7月火曜日クラスからメッセージボードをいただきました。初任者研修のときにも中心になって作ってくれた生徒さんが、今回も手掛けてくれました。可愛いですよね!