生かされて生きる

前回のクラスの生徒さんから、「ロートレック展に行ってきたのですね!ブログを読みましたよ」と声をかけてもらいました。できるだけ介護や福祉と関連性のある話を書きたいと考えていますが、たまには違った話題もと思ってブッコんだところ(笑)、反応があって嬉しいです。その生徒さんはかつて絵を描いていたりしたので、アートや絵画に興味があるそうです。介護の現場でも、介護とはつながりのない共通点が利用者さんとあったり、全く関係ない話題で盛り上がれると、その関係性には深みが増しますよ。こんな話は誰も興味がないだろうと勝手に決めつけずに、自ら発信してみることは大切ですね。

 

今回は調子に乗って、東山魁夷展に行ってきた話を書きます。正確に言うと、恵比寿から15分ほど歩いて、山種美術館に特別展「東山魁夷と日本の夏」を見に行ってきました。東山魁夷は私が20代の頃から好きな日本画家です。最初に感銘を受けたのは、「道」という一本道が目の前に広がっている作品でした。当時は、自分にはこれしかない!と思い込んでいる道があって、その心境と絵が見事にマッチしたのだと思います。東山魁夷の「道」を見るたびに、励まされた記憶があります。それ以来、画集などで数々の他の作品を見るにつれて、作品自体の素晴らしさとその背景にある「私たち人間は生かされている」という思想に惹かれてファンになりました。好きな画家はと問われると、今でも迷いなく「東山魁夷さんです」と答えます。

 

 

私の祖父が10年ほど前に亡くなり、しばらくしてから実家の応接間に東山魁夷の絵画(レプリカ)が飾られていることに気づきました。それまでも飾られていることは知っていたのですが、あまり気にしていなかったというか、意識を素通りしていました。祖父が亡くなってから初めて、祖父も東山魁夷を好きだったことに気づいたのです。今思うと、私が見て見ぬふり(知って知らぬふり)をしていたのは、もしかすると自分が東山魁夷を好きなのは、祖父の影響があったことから目を背けていたからかもしれません。自分のセンスで東山魁夷を好きになったつもりでいましたが、物心つく前の小さい頃に(祖父に見せられたり、連れられて展覧会に行ったりして)どこかで東山魁夷と接点があったのかもしれません(祖父と私の関係性はここでは詳しく書きませんのでご想像にお任せします)。私たちは自分で考えて、自分で決めて、自分で選んで、自分の力で生きてきたと思っていても、実は知っているところでも知らないところでも、他者の影響を大きく受けて今の自分がいるのです。

「東山魁夷と日本の夏」における東山魁夷さんの絵は、50代になろうとしている私にとっても素晴らしいものでした。20代の時に見ても、50代になっても変わらず良いものって、なかなかありませんよね。特に春夏秋冬をそれぞれに描いた4枚の絵画は、東山魁夷の全てを凝縮させたような、息を飲むほどに凄い絵画です。これらの作品を描いたのは東山魁夷が60代になってから、という事実にも励まされます。まだまだ人生これからですね。生かされている人生を大切に楽しみたいと思います。