目の前の利用者さんは将来の自分

今年も株式会社リープス様の入社式に呼んでいただきました。昨年同様、招待状に祝辞をお願いしますと書いてありましたので、どんな話をしようかと思って考えていきました。新入社員の方々は違っても、その他の社員の方々は同じメンバーもいますので、さすがに昨年と同じ話をするわけにはいきません。これから介護の世界に入る人たちを対象に、あまり堅苦しくならず、介護の学校の人間として相応しい内容にしたいと思いました。そこで思いついたテーマは、自分が提供している介護はいずれ自分に返ってくるというものです。私の経験談を元に話そうと台本らしきものを書いて行きました。

 

 

ところが、私が頼まれて壇上に上がったのは乾杯のタイミングであり、さすがに長々と話すわけにはいかず、「乾杯!」とだけ言って終わりました。せっかくメモを残していましたので、この場を借りて共有させていただきます(笑)。未発表のスピーチということですね。

 

ご入職おめでとうございます。そしてこのような会にお呼びいただき、ありがとうございます。私は湘南ケアカレッジという介護の学校を運営しています、村山敬之と申します。リープスさんとはもう7、8年ほどお付き合いさせていただいて、多くの卒業生さんたちがこちらで働かれています。お会いしたことがある方もいますし、これからお会いする方もいると思います。よろしくお願いします。

 

昨年の入社式では私のひいばあちゃんの話をしたので、今年はおばあちゃんの話をします。僕のおばあちゃんは怒ったのをみたことがないとても優しい人でしたし、また僕にとっては命の恩人でした。そんな大げさな話ではなく、私がひとり暮らしをしていたとき、たくさん仕送りをしてくれて助けてもらいました。お金の管理が下手くそな私はいつも月末になるとサトウのご飯に納豆をかけて食べる生活が続くのですが、おばあちゃんから段ボールが届くと嬉しかったです。食べ物や時にはお金も入れてくれて、おばあちゃんありがとうって祈っていました。

 

ただひとつだけ、困ったこともありました。私が小さい頃に田舎で食べたひじきが美味しいと言ったことをずっと覚えていてくれて、毎回ひじきを炊いて送ってくれたのですが、さすがに私も大きくなってひじきそれほど好まなくなったので、いつもまたひじきかと思っていました(笑)。今でもひじきを見るとおばあちゃんのことを思い出します。

 

そんなおばあちゃんとの思い出のひとつに、小さい頃、私が田舎に帰省して1週間ほどでまた帰っていくのですが、毎回別れのたびに私の手を握りしめておいおい泣くのですね。幼ごころにはまた次の半年後の休みになったら会えるから、そんなに泣かなくてもと思っていました。ところが最近、私の妹に小さな女の子姉妹がいて、彼女たちと田舎に帰ったとき1週間ほど一緒に過ごすと、最後の別れのとき寂しくて涙が出そうになるのですね。私も年を取ったのでしょうね。またいつ会えるか分からないし、もう2度と会えないかもしれない。そんな感情ですかね。

 

40年ぐらい経ってようやくおばあちゃんの気持ちが少し分かるようになりました。何が言いたいかというと、私も皆さんも必ずいつかそうなるのです。皆さんの目の前には利用者さんがいると思いますが、皆さんもいつかそうなるのです。ですから、今皆さんがする介護はそのまま将来の自分がされる介護だと思ってください。良い介護をすれば自分にも返ってくるはずです。いろいろ大変なこともあると思いますが、目の前の利用者さんを将来の自分だと思って頑張ってください。ありがとうございました。