湘南ケアカレッジに高校生が授業見学に来てくれました。将来は先生になりたくて、教えることについて学んでいるそうです。研究のテーマは「分かりやすい授業とは?」。学校の外に行って授業を受けてみるという課外研究の一環として来てくれました。生徒さんたちに協力して書いていただいたアンケート(高校生が自分たちで準備したもの)を授業後に回収し、ざっと見させてもらったところ、分かりやすい傾向がありました。
・テキストを読むだけの授業は分かりにくい
→当たり前ですが、テキストをなぞって行くだけの授業はつまらないということです。生徒さんからすれば、読めば分かりますということです。それよりも、自分の経験や体験談などを話してくれる方が興味深いし、心に響きます。全てを体験談で語るわけには行かないと思いますが、バランスには気を付けてください。
・グループワークはあった方が良い。
→いろいろな人の様々な意見を聞けるからという声が多かったです。ただ、最近のクラスで意見が分かれてしまったことで仲が悪くなったり、他の生徒さんの言葉に傷ついたりしてしまった生徒さんがいたケースもありましたので、グループワークをする際はやらせっぱなしではなく、何がどのように話し合われているのか少し耳を傾けてあげる必要もあると思います。
・テキスト(プリント)中心か、パソコン(パワーポイントや映像)中心の授業のどちらが分かりやすいかは意見が分かれる。
→基本的には、分かりやすければどちらでもOKという人は多いと思います。生徒さんにはこだわりはありませんので、テキストやプリントを使うべきところはテキストやプリントを、パワーポイントや映像の方が分かりやすい内容のところはパワーポイントや映像を使うべきということすね。臨機応変に。
最後に私もアンケートを書かせてもらって、記憶を辿ると、「分かりやすい先生とは?」の質問に対してこう書いたと思います。
「簡潔である」
→教える側は何としても伝えたいので、同じことを違う言い回しで繰り返してしまいがちですが、あまりにも何度も同じことを言いすぎると、相手は嫌気がさしてしまったり、余計にこんがらがってしまったりすることがあります。シンプルにズバッと伝えることも、分かりやすさのひとつです。
「親しみがある」
→これは生徒さんとの距離感の問題です。教育において最も大事なのは先生と生徒さんとの距離であると言っても過言ではなく、多くの場合、距離が遠くて伝わりません。同じことを言っていたとしても、上から物を言ってくる先生の言葉は心をすり抜けますが、親しみのある先生の言うことは素直に受け入れられます。つまり、教える前にすでに分かりやすいかどうか(伝わるかどうか)は決まっていて、距離感をしっかりとつくってから教えるとお互いにとって良い授業となります。
「尊敬できる」
→前述の親しみやすさや距離感と似ている問題ですが、少し異なります。尊敬できるとは、この人の言うことは正しい(方向性が間違っていない)と思ってもらえる、信頼があるということです。親しみがありつつ、尊敬もなければいけないというバランスが難しいところです。私たちが友だちや親の言うことは聞く耳を持たず、第三者の言うことに影響を受けやすいのは、親しみがありすぎても教えるー教わるという関係においてはバランスを崩してしまうということです。生徒さんから信頼されるには、見た目や言葉遣い、態度など全人的な要素が問われますので、やはり先生は自分磨きをやめてはいけないということですね。
最後に、「理想的な先生や良い先生とは?」という質問に対しては、「人前に立つとき、テンションを上げたり、多少の演技力は必要ですが、自分と違う人間にはなれないので、自分のキャラを思い切って出すしかない」という話もしました。ちゃぶ台を返すようですが、誰もが明るくて、朗らかで、丁寧で、親しみやすくて、尊敬できる理想的な先生である必要はないということです。湘南ケアカレッジの個性的な先生方を見てもらえば分かりますが、それぞれに得意なところと苦手なところがあって、お互いに凸凹が上手く結びついて、皆でひとつの円になっているのです。授業に立つときは先生はひとりですが、研修全体を通して生徒さんたちは私たちを見ていますので、私たちはチームなのです。だからこそ、むしろ凸凹があった方が良くて、全員が〇だったら結びつきようがありませんし、凸凹がしっかりとあるからこそ、それぞれの形も際立ちつつ、最終的には〇になれるのです。