映画「The Son/息子」を観に銀座まで行ってきました。いつも映画はだいたい新宿か新百合ヶ丘で観るのですが、ちょうど良い時間帯でやっていなくて、銀座まで足を伸ばしました。最近は映画の回転が早く、客足が遅ければすぐ次の映画に切り替わってしまうので、観たい映画はチェックしてなるべく早めに観に行かなければなりません。
前置きが長くなりましたが、映画「The Son/息子」はヒュー・ジャックマン主演×フロリアン・ゼレール監督の作品ということで期待していました。ヒュー・ジャックマンは「レミゼラブル」や「グレイテストショーマン」などで好きな俳優ですし、フロリアン・ゼレール監督は認知症を扱った前作「ファーザー」が素晴らしい出来でした。今回は心に病を抱える(急性うつ病)息子と父親を描いたとても重たい話でした。
妻と離婚し、息子は母親の下で生活している中、自身は再婚して妻との間に子どもが生まれたばかりという主人公ピーターをヒュー・ジャックマンが演じます。タイトルからはもちろん息子ニコラスも主人公のひとりであることに間違いはありませんが、ピーターの父も登場することからも、父から子へ、そしてさらにその子へと受け継がれていく、男系特有のマッチョな価値観と繊細な息子の間で揺れ動くピーターこそが物語の中心です。
個人的には、ピーターの父の「どんなことがあっても乗り越えるんだ!」という強さはいつの時代にも必要だと思いつつ、尊敬する父親と愛する母親の間で何者にもなれずに押しつぶされそうになる息子のナイーブさも理解できます。強さと弱さ、または鈍感さと繊細さと両極に分けてしまえれば話は簡単なのですが、誰しもに同居していて、人間はいつどちらに振れるか分からない生き物です。それは最後の最後に描かれたハッピーエンドのパターンを観ても分かります。境界線はあいまいであり、私たちはどちらの世界に足を踏み入れても不思議はないのです。
考えさせられる作品であることはたしかですが、ひとつだけ苦言を呈するとすれば、精神科医のアドバイスを聞かず息子の言うことを信じたことによって最悪の結果になってしまったケースが描かれていますが、それとは逆のケースもたくさんあると思うのです。究極的にはどの選択が正しいかは誰にも分からないものです。特に人間の精神については医学的に解明されていないことが大半ですから、医療サイドの言うことを聞かなかったからこのようなことになったのだというミスリードが生じないことを願います。
私は恥ずかしながら、親になってみて自分の命の尊さが分かりました。最終的に自分の命をどうするかは自分の責任で決めれば良いのですが、親が生きている間はせめて頑張って生きてもらいたいと願うのです。これは親から子、さらにその子どもたちへと受け継がれていく大切な約束なのです。
「ひとつ やくそく」・糸井重里
おやより さきに しんでは いかん
おやより さきに しんでは いかん
ほかには なんにも いらないけれど
それだけ ひとつ やくそくだ
おやより さきに しんではいかん