「認知症介護の話をしよう」

卒業生の岩佐まりさんによる2冊目の本が出版されました。介護職員初任者研修を修了したその日に、「こんな本を出したので読んでみてください」と言われ、手渡されたのが前著「若年性アルツハイマーの母と生きる」でした。あれから8年の歳月が流れ、彼女が経験したことや考えたこと、学んだこと、取り組んできたことの全てが凝縮されているのが、この「認知症介護の話をしよう」です。在宅介護のノウハウが詰まっていて、今、在宅介護に悩んでいる人はもちろん、これから在宅介護を始めようとしている人たちにも絶対に読んでもらいたい内容です。知っているだけで救われること間違いありません。

 

本の構成としては、認知症になった家族と生きる10人の介護者たちのケースが紹介され、その後に岩佐さんが的確な解説を添えています。家族や介護者の形は十人十色であり、それぞれの悩みや問題があることが分かりますし、岩佐さんのアドバイスもさすがですね。共倒れにならないように、抱え込まず他人に相談しSOSを出すこと。ケアマネジャーと相性が合わない場合は変更してもらうこと。延命についてどう考えるか。自分の人生を生きること。情報収集をすること。介護者は幸せになるべき、などなど。自身の経験からだけではなく、介護職員初任者研修や社会福祉士になるために学んだことが融合して、実に味わい深く、崇高なメッセージになっています。

 

介護職員初任者研修のクラスメイトであった村木さんの話も紹介されていて、私も本人から何となくは聞いていましたが、そうだったのかと改めて知った次第です。その中に、岩佐さんと彼女の出会いのきっかけとして、介護職員初任者研修の授業内のことが描写されてありました。

 

今でもよく覚えているのですが、彼女とはじめて会った介護職員初任者研修の初日に、講師の先生が一人ひとりに「介護のイメージとは?」と聞いたんです。

私は、「愛です」と答えたわけですが、私の次に差されたのが彼女でした。その彼女の答えが実にユニークで、彼女はなんと「汚い」と言ったんですね。

今なら彼女がそう答えた理由は分かりますが、当時の私はびっくりして、彼女に興味を持ちました。それが友人になったきっかけです。(P51

 

8年も前のことですが、私もあのクラスのことは今でも新鮮に思い出せるから不思議です。人数が比較的少ないクラスだったのも理由のひとつかもしれませんが、研修が終わった後に飲み会にも参加させてもらって、それぞれの個性的な人生の歩みを教えてもらった楽しい思い出があります。そういえば、あのクラスからいただいたアルバムは壁に飾ることができなくて困ったなあ(笑)。

 

 

個人的には、お母さんを背負って生きたことで、彼女は人間として大きく成長したのだと感じました。ケアカレに来た当時はまだ若いところもあったと思いますが、この8年間で私たちの想像のつかないぐらい大きくなったのだと、この本を読んで驚かされました。人間って、こんなにも成長するのですね。全くと言ってよいほど成長していない自分が嫌になるほどです。彼女の場合はたまたまお母さんの介護であっただけで、背負うものは何でも良いのだと思います。仕事でも、子育てでも、趣味でも、自分がこれだと心に決めて、一生懸命に取り組むことで人間は成長するのですね。「認知症介護の話をしよう」はケアカレ図書館にありますので、ぜひ読んでみてください!