それが人生の目的だから

「何かを学ぶことはもうないと思っていましたが、学ぶ楽しさを知りました」、「この歳になって新しいことを学ぶために学校に通うのは勇気がいりましたが、人生が変わった気がします」など、10月短期クラスの生徒さんたちからは、「学ぶことを通して何かを得た」という声が多く聞かれました。まさにその通りで、私たち大人は、学ぶことで世界が広がります。大げさかもしれませんが、学ぶことは冒険に出ることなのです。

 

僕の大好きな「LIFE!」という映画があります。主人公のウォルター・ミティは、伝統的フォトグラフ雑誌「LIFE」のネガフィルムの管理者という地味な仕事をしており、実に平凡な人生を送ってきた男です。ウォルターには空想癖があり、いつの間にか現実から抜け出して空想の世界へと入ってしまいます。そこでは彼は勇敢な冒険家であり、危険を冒してでも周りの人たちを救うヒーロー。ところが現実は厳しく、好きな女性には想いを伝えることができず、雑誌は廃刊となり、伝説のカメラマン(ショーン)が最終号の表紙にと送ってきたネガが見つからず、仕事を失ってしまう窮地に陥ります。絶体絶命の危機に瀕し、ウォルターは自分の殻を打ち破って冒険に出ます。オフィスを飛び出して、カメラマンのショーンを探し求めてグリーンランドを目指したのです。

ウォルターの冒険はグリーンランドからアイスランド、そしてアフガニスタンに及びました。ついにショーンと遭遇し、ネガが実は自分に贈られた財布の中に入っていることを知らされ、彼はロサンゼルスに戻ります。ようやく探し出したネガをギリギリに入稿し、何とか表紙を間に合わせることができました。最終号の発売日、売店に並ぶ「LIFE」の表紙を見たとき、ウォルターは目を疑います。これまで偉大な人物だけが飾っていた表紙には、「これを作った人たちに捧げる」という言葉が添えられ、ネガフィルムの管理者にすぎない自分が片隅に映っていたからです。危険を冒してでも未知の世界に飛び出すカメラマン、ショーンのような冒険家もいれば、日の当たらない場所で地味で仕事をして、平凡な日々を過ごすウォルターのような人もいて初めて「LIFE」のような雑誌がつくれたのです。

紹介が長くなりましたが、僕はこの雑誌「LIFE」のスローガンが大好きで、デスクトップの画面にもしているほどです。

 

TO SEE THE WORLD, THINGS DANGEROUS TO COME TO,

“世界を見渡して、危険でも立ち向かおう”
TO SEE BEHIND WALLS, TO DRAW CLOSER,

“壁の向こう側の世界を見よう、もっと近づこう”
TO FIND EACH OTHER AND TO FEEL.

“お互いを知ろう、存在を感じよう”
THAT IS THE PURPOSE OF LIFE.
“それが人生の目的だから”

 

この映画が伝えたいことは、人生の目的って何だっけ?ということです。それはお金持ちになることでも、偉くなることでも、長生きすることでも、幸せになることでもありません。自分の生きている狭い世界から飛び出すこと、たとえ危険であっても恐れず挑戦してみること、自分の知らない向こう側の世界を知ること、友だちになって仲良くなること、他者を理解し、自分を理解してもらうことこそが、人生の目的だとしているのです。僕も全く同感です。

 

僕も若い頃は成功して自分の思いどおりの人生を歩むことが目的だと思っていましたが、そうではないと気づく年齢になりました。成功しても、お金持ちになっても、偉くなっても、長生きしても、ひとときの幸せを感じても、案外つまらないものです。人生が面白いと感じるのは、やはり自分の知らない世界があることを知ったとき、リスクを背負ってでもチャレンジしているとき、自分で決めつけていた限界を突破できたとき、誰かと仲良くなれたとき、誰かと心が通じ合えたときなのです。一見、過程のように思えるそれらこそが、人生の目的なのです。

 

 

必ずしも海外に旅に出る必要はありません。もちろん、世界を知るためには外の世界へと旅立たなければならないこともあるでしょう。ただそういった物理的な世界の広がりだけではなく、今の仕事や生活の延長線上でも、新しい世界を見ることはできますし、チャレンジをしてみることも、誰かと仲良くなったり、理解し合うこともできるはずです。地味な仕事をして、平凡な毎日を送らなければならない時期もあるでしょうが、人生の目的さえ間違わなければ、僕たち誰もが素晴らしい人生を送ることができるのではないでしょうか。