卒業生さんが介護福祉士の合格証書を持って、合格を知らせに教室まで来てくれました。3月に合格が分かってから、来ようと思っていただけど、なかなかタイミングが合わず今の時期になってしまったとのこと。点数を聞くと、100点越えでの合格でした!直前試験対策講座を受けて、問題を解くコツが分かったおかげとおっしゃっていましたが、100点以上を取れたということは、ご自身の努力があったからに違いありません。合格証書を両手に記念撮影をさせてもらい、誇らしげな顔を見て、私たちも嬉しく思いました。特に彼女の場合は、介護職員初任者研修を5年前に受け、その後、今の施設で働き始め、苦労をされたのを知っているだけになおさらです。
合格祝いを兼ねて、ケアカレの社食ともなっている近くのネパール料理専門店「ソルティ」に行きました。ご自身でつくられた梅シロップをいただいたことがあるように、彼女はかなりの食マニアであり、味には敏感なので、ネパール料理が口に合うかどうか心配でしたが、ペロリと食べてくださって安心しました。好き嫌いが分かれる豆のスープ(ダル)も、さすが問題なく召し上がっていました。ランチをしながら、仕事の話を聞くと、今の施設で働き始めて5年になって、周りのスタッフさんたちにも理解してもらえるようになり、強く当たってきたスタッフは辞めて行き、少しずつ働きやすくなっているとのこと。実は彼女は片方の耳が聞こえづらく、コミュニケーションを行う上での障害があるのです。
働き始めた当初は、周りは普通に伝えたつもりが彼女にとっては聞こえておらず、話を聞いていないと思われたり、細かい話が聞き取れなくてミスをしてしまったりしたことが幾度もあったそうです。今流行りのインカムも聞こえる片方の耳に入れていると、利用者さんの声も周りの音も聞こえなくなってしまうため、外さざるを得ないそうです。インカムは両方の耳が聞こえるという前提でつくられているのですね。それらのことを責められたり、周りの人たちに迷惑を掛けてしまったりして、彼女自身も何度も辞めようと思ったことがあり、実際に私たちも相談を受けたこともありました。それでも彼女は自分の意志で、続けるという選択をして今まで続けたのです。「石の上にも3年だと思って頑張りました」と彼女は言います。ありきたりの格言ですが、彼女の口から出ると大きな石のような重みがありますね。
辞める・辞めないの判断は、人それぞれの状況や年齢によっても異なると思います。「私は年齢も年齢だから頑張れた」と彼女は言っていましたが、若い人なら自分に合った環境を求めて転職する判断も必要なときもあります。無理をしすぎて身体を壊してしまうのは本末転倒ですし、心が病む前に辞めるのは原則です。苦しかったり、辛かったら逃げても良いのです。ただ一方で、時間が解決してくれる問題もあります。踏ん張ったからこそ得られる経験や知識・技術もあると思います。先日のブログに書いた「1万時間の法則」も、ひとところでやり続けるからこそ得られるキャリアでもあります。他の業界と違って、介護の世界は潰しがきく(横の移動がしやすい)のは良いことでもある反面、彼女のように石の上にも5年いられなかったら、自分だけではなく周りも良い方向に変わったという貴重な経験を得られなかったかもしれません。辞める・辞めない問題の絶対的根拠や結論は最後まで出ませんが、何が言いたいかというと、私たちは頑張って自分の状況を変えた彼女を尊敬しているということです。