先生が出席を取る理由

湘南ケアカレッジでは、授業が始まる前に、先生が生徒さん一人ひとりの名前を呼び、返事があれば出席簿に〇をつけることで出欠の確認を行っています。もう10年間も出席を取ってきているので、このような形が当たり前だと思ってしまいます。ところが、他の学校で教えたことのある先生はご存じでしょうが、実は当たり前ではないのです。出席簿を前から後ろに回していき、生徒さんが自分の名前を書いたり、出席欄に〇をつけたりする学校もあれば、事務局のスタッフが入口のところで先に出欠を取っておく学校もあるそうです。

 

 

それぞれのやり方があって、どの方法が正しいということはないのですが、先生が生徒さんの名前を呼ぶスタイルをケアカレが取っているのには意味があります。出欠を取るところからコミュニケーションが始まっているのです。

 

  先生が生徒さんの名前を呼ぶ

  生徒さんが「はい」と言って、手を挙げる

  先生は(笑顔で)その生徒さんのことを見る

  生徒さんも先生と目が合う(笑顔になる)

 

これは挨拶と同じで、一方通行ではなく、先生と生徒さんの間にやり取りが生まれます。「はい」と声を出してくれない生徒さんもいるかもしれませんし、こちらを見てくれない生徒さんもいるかもしれません。それでも先生が名前を呼んで、生徒さんがそれに応じるという個人間のやり取りが生まれます。しかも、授業に入る前の、先生と生徒さんの間の最初のコミュニケーションですから、お互いの最初の印象がここで決まります。

 

たとえば、「はい!」と元気よく答えてくれる生徒さんには元気だなあという印象を持ちますし、無言で手を挙げる生徒さんは何か嫌なことがあったのかなと心配になります。目を伏せてこちらを見てくれない生徒さんは自分のこと嫌いなのかなと不安になりますし、逆に互いに目と目がきちんと合うと嬉しいはずです。さらに笑顔があると最高ですね。

 

これは生徒さんにとって逆も然りです。ぼそぼそとした声で出席を取る先生がいると、陰気な先生だなと感じてしまいますし、目を伏せっぱなしで出欠を取る先生は自分たちに興味がないのかなと察してしまいます。明るく笑顔で出欠を取るだけで、最初から場を温めることができますし、生徒さんたちもリラックスして授業に臨めます。これは塾の出欠を取るときにも講師が意識しているイロハのイです。ほんの1秒そこらのやり取りですが、人間同士のコミュニケーションの本質が詰まっている瞬間なのです。

 

 から④が基本ですが、⑤で先生から「よろしくお願いします」とか「(ちゃんと返事をしてくれて)ありがとうございます」と返してもさらに良いと思いますし、「私と同じ苗字ですね」とか「今日は振り替えなんだ」とかYes,Noクエスチョンを入れるのも、人によっては応用編として良いと思います。まあそんなに難しく考える必要もなくて、お互いに気持ち良く笑顔で挨拶するように出席が確認できたら良いということですね。

 

たしかに、出席簿を生徒さんに回してもらったり、事前にスタッフが出欠を取ったり、タイムカードでピッとしてもらったりすれば、効率的で時間の短縮にはなるかもしれません。ひとり一人の名前を呼ぶと、1人6秒×30名で約3分ぐらいは時間が掛かってしまいますからね。ただ、たったそれだけの時間で生徒さんたちと簡単なコミュニケーションが取れるのであれば悪くないのではないでしょうか。むしろせっかく授業の最初の貴重な時間を使うのであれば、良質なコミュニケーションを取らなければならないのです。自分の人間性を伝え、生徒さんの人間性を知り、互いに心が通じ合うような個別のやり取りができれば、たった3分が大きな意味を持つのです。出席の確認は単なる出席の確認ではなく、出席を取ることを通してお互いの心を通じ合わせるためにするのです。

 

 

このように、普段から先生方が何気なくしてくださっている言動には大きな意味があるのです。それ自体はほんの些細なことに過ぎませんが、そうした言葉や行動が積み重なると、クラス全体の雰囲気をつくり出します。湘南ケアカレッジが生徒さんにとってアットホームで楽しい学校であるのも、生徒さんと先生方や学校との距離感が近いのも、生徒さん同士の仲が良いのも、実はそうした小さいことから始まっているのだと私は思っています。効率を追い求めすぎると、物ごとの裏にある大切な意味や本質を見失ってしまうことになりますね。湘南ケアカレッジはこれからも小さなコミュニケーションを積み重なることのできる学校でありたいと願っています。