10歳になりました

修了証明書を再発行してくださいという依頼と共に、昔なつかしい卒業生さんから電話をいただくことがあります。先日はSさんと名乗る女性から電話があり、会話の中で「うちの●●(男の子の名前)ももう10歳になりました」とおっしゃっていました。そのとき私はピンと来ず、「そうなんですね」と適当な答えをしてお茶を濁しましたが、その後、修了証明書を再発行するためにSさんのフルネームをお聞きして、過去のデータを調べてみたところ、まさかの10年前の4期生の生徒さんでした!彼女の顔が思い浮かび、そして、ある出来事が鮮明に蘇ってきました。

 

Sさんは5月短期Bクラスの生徒さんでした。当時は月曜日から金曜日まで平日毎日通って、わずか3週間で修了するという最短のクラス。当然のことながら、生徒さんは土曜日と日曜日しかお休みがなく、そのお休みの日にケアカレのビルのちょうど入り口のところでベビーカーを押しているSさんにバッタリお会いしたのでした。「小さなお子さんがいらっしゃったのですね。おいくつですか?」、「1歳になったばかりです」というような会話をした記憶があります。そのときに男の子のお名前が●●であることを教えてもらったのでした。あれからちょうど10年が経って、「うちの●●(男の子の名前)ももう10歳になりました」と電話で話すとは思いも寄りませんでした。

 

ベビーカーに乗っていた、あの小さな赤ん坊が10歳になったのです!●●くんの姿を見たら、その成長ぶりにさらに驚かされたことでしょうし、あの赤ん坊が10歳になったという事実だけで驚き以外の何ものでもありません。そして、湘南ケアカレッジも、私たちが気づかないうちに、赤ん坊から10歳になったのだと自覚したのです。他人の子どもの成長は速いと言いますが、比べてみることで、自分たちもいつの間にか大きく成長していることに気づかされるのです。「100年続く学校に」と宣言してしまいましたので、まだ10歳でしかありませんが、それでも赤ん坊が小さな子どもになったのですから大きな成長ですね。

 

子どもと違って、学校の成長というのは目に見えにくいものですが、それでも大きく変わっているのだと思います。この前、行きつけの美容室に行っていつもの美容師さんと話している中で、「うちもかれこれ20年近くになりますが、それぐらい続けていると、やはり地元の人たちに認知されている部分もあるのか、なんだかんだ言って、お客さんも途切れることが少ないですね」と言っていました。その美容師さんは一度、独立してお店を持ってみたのですが、いろいろあって出戻りしたそうです。そうして初めて、長く続けていることの力に気づかされたと言います。長く続けること自体が難しく、長く続けることによって、気づかないうちに根のようなものが深く広く張り巡らされていくのです。

 

 

あっという間の10年でしたが、湘南ケアカレッジも町田から神奈川に深く広く根を張り巡らせてきたのではないでしょうか。先生方が生徒さん一人ひとりに向き合ってくださって、どの授業でも世界観が変わるような福祉教育を提供してくださったことの積み重ねは、目に見えなくても、大きな力になっているはずです。それはお金をかけて広告を打っても決して届かないほどに、深くて広い根の力なのです。最初は点にすぎなかったかもしれませんが、次第に点がつながって線となり、さらに線と線がつながって面となり、10年経った今や立体となりつつあるのではないかと思います。赤ん坊が20歳になる頃には、私たちにはどのような世界が見えているのか、湘南ケアカレッジはどのような学校に成長しているのか楽しみです。