新卒の方々を預かる

今年は新卒の人たちが多く介護職員初任者研修に参加してくれています。新卒の採用に力を入れる施設や事業所が増えたのかもしれませんし、ぜひ湘南ケアカレッジで最初の研修を受けさせたいと思ってくださっているのかもしれません。いずれにしても、まだ10代のこれから社会に飛び出そうとしている若者たちの一歩目の教育ですから、最高の学びの機会にしたいと心から願っています。「ケアカレで介護職員初任者研修を受けたスタッフは楽しそうに長く仕事を続けてくれるよ」と施設や事業所からも言ってもらえると嬉しいですね。

私たちが、介護職員初任者研修が大事だと思うのは、介護の世界への入り口の教育の場であるからです。現場で働いていくにつれて、少しずつ考え方や気持ち、取り組みは変わってしまうこともありますが、最初の教育の方向性を間違うと最終的には大きく誤った場所に行ってしまうことも確かだからです。逆に言うと、最初を間違えなければ、最終地点も大きくは間違わないということです。介護の仕事を少しでも長く続けてもらうためには、知識や技術のみならず、介護に対する考え方が大事なのです。せめて正しい考え方だけでも(特に新卒の方々には)伝わるといいなと思います。

 

私たちが思っているよりも初等教育は重要です。何も知らないうちに、Aという間違った方向を示されてそこに向かってしまうと、たとえBという方向が正しいとあとから分かっても、なかなか引き返せなくなります。誰もが同じ地点を目指す必要はないのですが、せめて同じ方を向いていないと、あとから軌道修正するだけでは足らず、世界は混乱してしまいます。たとえば、今の日本の異常な感染症対策は、テレビなどのマスコミで用いられる専門家や医師たちが初期の段階から完全に間違った方向に導いてしまったことに端を発しています。介護の世界でも、措置の時代から自立支援の考え方が芽生えるまでに数十年の歳月がかかりました。

 

知らないことも怖いことです。私たちは社会に出て仕事を始めてしまうと、同じことの繰り返しをしてしまう(それを安定と考える)傾向があるので、あきれるほどに知識や技術のアップデートをしなくなります。一番勉強したのは高校受験のときなんて言う方も多いのではないでしょうか。介護の世界は、介護福祉士を受けるときに実務者研修と筆記テストのために勉強しなければならないのでまだましですが、ほとんどの仕事においては自ら学ぶ必要もないことが多いはずです。

 

そうなると、初等教育で教えてもらわなかったことは、一生知らないで過ごすことになりかねません。職場の同僚や知り合いなどが教えてくれたらよいのですが、彼らも同様に知らなければ教えようがありません。たとえば、ホームヘルパー2級の時代に資格を取った人たちは、ボディメカニクスという言葉や概念を教えてもらっておらず、おそらくずっと持ち上げる介護をすることになるはずです。教えてもらっていないということは恐ろしいのです。

 

 

私たちの介護職員初任者研修で教えていることが全て正しいとは思いませんし、将来的に新しい知識や技術が更新されていくこともあるでしょう。それでも、介護に対する考え方や向き合い方の方向性としては、正しい方向に導くことができていると自信を持って言えます。それは生徒さんたちが研修を修了したとき、「自分が思っていた介護のイメージとは全然違った」、「介護の仕事をするのが楽しみになった」、「何かあったときまたケアカレに戻ってきます」と言ってくれて、笑顔で卒業してくれることからも分かります。新卒の方々を教えさせてもらうことは責任が重いのですが、ひとりでも多くの生徒さんたちの背中を正しい方向に押してあげたいなと思います。