「お母さんが勉強しすぎて、怖いぐらいです」
卒業生さんが、介護福祉士の試験勉強をしているお母さま(こちらも卒業生)について話してくれました。食事の時間以外はテキストや問題集とにらめっこ。話しかけるのもためらうほどピリピリしているそうです(笑)。お母さまは筆記試験対策講座にも通ってくれて、ミニテストも非常に良くできていたのですが、やはりそんなに熱心に勉強していたのですね。直前に過去問だけやって受かったみたいな話は良く聞きますが、実際には彼女のように合格したい一心で一生懸命に学んでいる人たちの方が多いのだと思います。だからこそ合格した喜びは大きいし、「先生方のおかげで合格できました!」と毎年嬉しい声が届くのでしょう。
私は定期的にテストを受けることに賛成派です。介護職であれば現場で3年間働いて、その後、介護福祉士になるためにはテストを受けます。テストを受けることが重要なのではなく、そのために勉強することに大きな意味があると思います。また、子どもたちも高校受験、大学受験と3年ごとにテストがあって、そのために勉強する必要があります。最近は、中高一貫校が増えてきたり、面接や論文だけで合格できるAO入試や推薦などで進学する生徒さんも多いのですが、せっかくの学びの時期がもったいないなと正直思っていました。さすがに毎年テストを受けるのは大変かもしれませんが、せめて3年に一度ぐらいは学びの時間をつくれると人生が豊かになるのではないでしょうか。
「子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?」という本があります。養老孟司さんや茂木健一郎さん、瀬戸内寂聴さんなど錚々たる8人の識者たちが、子どもたちにも分かるように、なぜ勉強しなければならないかを独自の視点で語っています。その中で、私がもっとも腑に落ちたというか共感したのは、福岡伸一さんという生物学者のお話です。
福岡伸一さんは、「勉強すれば『思い込み』から自由になれるから」と教えてくれます。ここでいう自由とは、ありのままの自分でいられることであり、その自由を奪うのが人間の脳のクセがつくりだす「思い込み」だというのです。あらゆる考え方や知識、情報を得ることで、こうしなければならない、こうであらなければダメだという自分の「思い込み」に気づき、私たちは自由になることができるというのです。怖いと思っていたことも知ることで恐怖心がなくなったりします。視野を広げるという意味でもありますが、自分を縛りつけている思考の誤りを正すということです。私たちは学ぶことで心身ともに自由になれるのです。つまり、学ぶ時間は自由になるための時間、そして、学校は自由になるための空間ということですね。今年の介護福祉士試験を受ける生徒さんたちが全員合格して、心を自由に介護の仕事を続けてくれることを願います。
今日は国家資格である介護福祉士の筆記試験日です。筆記試験対策講座や直前模試対策講座を受けてくださった生徒さん、そして実務者研修の卒業生さんたちが、全力を出し切って合格してくれることを心から応援しています。幸いにも天気にも恵まれ、本当はそれぞれの試験会場に私たちも足を運び、入口のところで皆さんを激励したい気持ちです。初めて受験する人は緊張しているだろうなとか、苦手分野があったあの人は克服できたのだろうかなど、それぞれの顔を思い浮かべながら、心はそちらに向かっていますよ。