理念とは

先日、影山さんがある施設へと取材に伺った際、その施設の「理念」について熱く語ってもらったそうです。それをきっかけに「理念」というものに興味を持ち、調べていると、面白法人カヤックの「いい経営理念の定義と、他社の経営理念」という記事を見つけたとのことで共有してくれました。いい経営理念の定義とは、①成長性を示唆していること、②理念から戦略&戦術のヒントがあること、③社会に貢献するものであること、という3つが挙げられています。個人的には、それらに加えて、その会社や団体に関わる誰もが覚えられるほど、分かりやすくてシンプルであることが大切だと思います。

会社の理念は、まだ始まる前(創業前)に決められることが多いため、実際に運営・営業をしていく中で、ほとんど実態に即さなくなった理念も多いはずですし、また形骸化してしまった理念も星の数ほどあるはずです。ですから、前述の施設のように、今も理念を大切にして運営がなされていること自体がまず素晴らしいですね。

 

ちなみに、その施設の理念は「幸せの創造」だそうです。創造するというクリエイティブさには成長性が示唆されていますし、介護を通して利用者や職員を幸せにすることが何よりも優先という経営戦略のヒントにもなり、もちろん社会貢献性もある。さらにシンプルで分かりやすいという、いい理念のお手本です。あとはその理念に沿って経営・運営をしつつ、かかわる全ての人たちに浸透していくことが大切です。

 

湘南ケアカレッジの理念は、ご存じのとおり、「世界観が変わる福祉教育を」です。これは2013年に湘南ケアカレッジが開校するかなり前から決まっていました。むしろ最初に理念があって、そこから学校ができて、先生方と生徒さんたちが集まってくださったという感じです。なぜこの理念かというと、研修を受けてくれた生徒さんたちの世界の見え方が変わるほどの素晴らしい教育を提供したい、そのような学校をつくりたいと思っていたからです。

 

私が以前に働いていた大手の介護スクールは、教室が増えて、規模が大きくなればなるほど、研修の中身や学校の運営には力を入れなくなりました。最初の頃は立ち上げメンバーであった先生方の情熱だけで成立する良い教室はありましたが、大きくなるとその熱意は薄まり、ただのお金儲けのための学校になってしまいました。そもそも医療事務からスタートした学校なので、創業者はもちろん経営上層部、幹部は、介護・福祉教育にはほとんど興味がないのですから当然です。そのあたりを見てきて、そうならないようにという意味も込めて、「世界観が変わる福祉教育を」という理念を掲げたのです。

 

いい「理念」の基準に当てはめてみると、①成長性を示唆していることは×ですね。理念のスケールは大きいのですが、そこには会社(学校)としての成長性は含まれていません。成長するイコール大きくなることだとは思いませんが、このあたりが課題なのかもしれません。

 

②理念から戦略&戦術のヒントがあることは○です。ケアカレは良質な研修を提供し、ひとり一人に人間として関わることを通じて、その生徒さんが感動し、ステップアップ研修に来てくれたり、「ケアカレの先生は皆素晴らしいよ。ケアカレに行った方がいいよ」と言ってくれることが最高の広告になっています。熱さと温かさが戦略であり戦術なのです。

 

③社会に貢献するものはもちろん○です。私たちはただ介護の研修を行っているのではなく、介護や医療について教えることを通して、その生徒さんたちの世界観を変え、人生を変え、その周りにいる人たちに良い影響を与え、そして地域や社会も変えていくのです。

 

 

最後に、理念には判断(行動)基準になるという重要な意義があります。私たちがやっていること、やろうとしていることは、理念から外れていないのかと常に自問するのです。それは「世界観が変わる福祉教育を」提供することにつながっているのか?という観点で考えることで、正しい判断や行動ができるはずです。素晴らしい先生方がいてくれることに対する感謝が生まれるのも、「世界観が変わる福祉教育を」提供することを中心としているからです。そう考えると、まだ何もないときに決めたひとつの理念が、あらゆるものや人に影響を与えて、湘南ケアカレッジを作り上げていくのですから不思議ですね。これからも湘南ケアカレッジは理念を大切に守りながら、「世界観が変わる福祉教育を」を提供し続けていきます。