8月のケアカレナイト「アール・ブリュットの世界を体験しよう」が行われました。今回はいままでのケアカレナイトとは少し趣向が変わり、アート(芸術)をテーマとしての講演となりました。だからだと思いますが、若い人たちもたくさん参加してくれて、いつもとはまた違った幅広い年齢層でした。ゲストスピーカーの朝比奈先生は、アール・ブリュットについて分かりやすく教えていただき、アーティストの作品や制作秘話までを語ってくださいました。講演の後半は、実際にインクと画材を使って、スタンピングによる作品を制作し、それぞれの作品を鑑賞して評価してもらえるという楽しい雰囲気になりました。ケアカレナイトは毎月が神回だと感じるのですが、今回もまさに神回であり、参加者の皆さまは大満足して帰って行かれたと思います。
アール・ブリュットは、日本では障害者のアートと限定されてしまいがちですが、海外では既存のアートの枠組みや既成概念を突き抜けるようなアートとして、評価は定まりつつあります。私はアートに詳しいわけではありませんので、現代アートとアール・ブリュットの区別もなく作品を鑑賞していますし、そこに明確な境界線を感じることはありません。たとえば、ZOZOTOWNの前澤社長が123億円で購入したパスキアの素晴らしい作品は、私にとってはアール・ブリュットなのではないかと思えるのです。日本のアーティストでいうと、草間彌生さんなんかもそうですよね。誰の作品なのかが重要なのは分かっているつもりですが、誰が作っているかよりもその作品に込められたパワーのようなものに心を動かされてしまうのです。
今回の講演で個人的に面白いと思ったのは、朝比奈先生が制作にたずさわっているクラフト工房LaMano(http://www.la-mano.jp/)での制作秘話です。コーヒーミルを挽くことが大好きな利用者さんの特性や身体的な感覚を生かして、ぐるぐると円を大きく描く作品が生まれたり、大好きなスタッフさんがなぜか下半身だけ沈んだイラストを描くのは理由があったり、動物をどの角度から見ても正面や真横から描く空間感覚を持つ尾崎さんに後ろ向きの猫の写真を見せたら正面からの絵を描いてくれて驚いたエピソードなど、その作家のことを知るとより作品が立体的に見えてくるようになりました。
何と言っても、今回の講演の肝は、参加者が自分でも表現することができたことです。実際に自分の手を動かして、白紙の状態から何かを創造してみると、その難しさだけではなく、つくることの喜びを感じることができたはずです。無心になって、ひたすらにキャンバスに集中する時間など、私たちの普段の生活からとっくの昔に失われてしまっているからです。
そして出来上がった作品を他の方のそれと見比べてみるとびっくり。同じような画材を使っているにもかかわらず、全く違うものが現れています。お互いに鑑賞して、褒め合ったり、講師から評価してもらうことで認めてもらったり。恥ずかしいながらも、自分のつくった作品をたくさんの人に観てもらい、褒め、認めてもらえると嬉しいですよね。自分で体験することができる、褒め・認め合える。このような講演や研修を成功に導く、2つの大切な要素だなと改めて学ばせてもらいました。朝比奈先生、参加者の皆さま、スポンサーの皆さま、遅い時間まで楽しんでくださって、ありがとうございました!