小さな頃から介護に親しむ

7月短期クラスが修了しました。夏休みということもあり、クラスの3分の1が中高生というクラスでした。いつものクラスの平均年齢よりも10歳は確実に若かったと思います。周りのクラスメイトさんたちは、あまりの年齢のギャップに戸惑う部分もあったかもしれませんが、最後は男性も女性も中高生たちも打ち解けて、ひとつになって終わってくれました。小中高生が介護職員初任者研修を受けてくれる度に思うのは、若いのに凄いなということ。自分が学生だった頃には意識もしていなかった介護・福祉の世界に目を向けて、興味を持って学んでいることが素直に素晴らしいと思うのです。私も小さな頃から福祉のこころを学ぶことができていたら良かったのにと、彼ら彼女たちがうらやましくもあります。

ちょうど7月短期クラスの研修中に、リクルートさんが話を聞きにきてくれました。地域に根差した学校の実情と介護業界の現在や未来について、私の知っている限りのことをお話ししました。その中で、どうしても介護業界における人材不足の問題に話が及ばないわけにはいきません。湘南ケアカレッジも例にもれず、介護職員初任者研修の生徒さんは次第に減ってきていることを話しました。

 

介護の世界で働く人が減ってきてしまっている大きな理由は、世の中の景気の良さです。景気が良いと別の仕事がたくさんある(生まれる)ため、介護の仕事をしようと考える人は少なくなります。新しい人が入ってこないばかりではなく、介護の仕事をしている人が別の業種に転職してしまうこともあります。逆に景気が悪いと他の仕事が少なくなるため、介護の仕事に就こうという人たちが増えるということです。世の中の景気のアップダウンと、介護の世界の人材ニーズは全く正反対の波を描きます。どこの学校も同じことを感じているはずですが、景気の波にはどうしてもあらがうことができないのです。

 

もちろん、いつ景気が悪くなって介護の人材不足が多少なりとも解消されるか分かりませんし、またこのまま景気が良くてますます介護サービスを提供する人が少なくなってしまうかもしれません。世の中の景気だけはコントロールできませんので、私たちは景気が良い時は介護の業界は苦しいとあきらめるしかないのです。

 

でも、景気に左右されていてばかりではなく、何か主体的に業界全体として取り組めることはないのかと聞かれたので、話しながら考えつつ、7月短期クラスのことも頭に浮かび、「小さいころから介護に親しむきっかけをつくることが大切ですかね」と答えました。近くの老人ホームを訪れて交流している幼稚園や小学校もあったり、中学生になると職場体験で介護施設に行く生徒さんもいるはずです。こうしたきっかけはまだまだ少なく、介護が必要な人たちがいる場所があり、そこで働く人たちもいることをもっと知ってもらうべきです。小中高生たちは心が柔らかく、福祉のこころを素直に学ぶことができるはずですし、見せ方伝え方次第で介護の仕事を魅力的だと思ってもらうこともできるのではないでしょうか。

 

 

いざ社会人になって、どのような仕事をしようと考えたとき、頭の片隅にでも介護の仕事が浮かんでくれると嬉しいです。選択肢のひとつとしてあるかどうかは大きいです。超高齢社会を迎えた日本において、介護の世界の人材不足は介護業界だけの問題ではないのです。人の子として生まれてきた以上は、遅かれ早かれ、介護を避けて通るわけにはいかず、誰しもが向き合わなければなりません。そのとき自分ひとりでは介護はできないのです。手を借りる人がいなければ、私たちは生きていけないのです。だからこそ、小さい頃から介護(の現場や仕事)に親しむ(もしくは学ぶ)きっかけづくりは、日本全体の喫緊の課題だと思うのです。

ひとりの女性の声掛けから、メッセージボードの作成が最終日に行われました。皆さんの気持ちが伝わってきて嬉しいです。勇気を持って声を掛けてくれた彼女のこれからの人生も、大きく変わってゆくはずです。