「日本は、世界でも指折りの幸せな国だ」という一文で始まる本書。WHO(世界保健機構)の調査における平均寿命のランキングで、日本は世界のトップになっています。日本だけではなく、世界規模で平均寿命はとどまることなく上昇を続けています。おそらくしばらくはペースが落ちることはなく、このままいくと2007年生まれ(今の小学4年生ぐらいですね)の子どもたちの半分は、107歳を越えて生きることになります。もちろん、子どもたちの話だけではありません。私たちに当てはめてみても、今の20歳の2人に1人が100歳以上、40歳の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上、生きることができるのです。私は今年41歳の誕生日を迎えたとき、人生の折り返し地点に来たと感じましたが、そうではなかったのです。まだまだこれからなのですね。
こうした誤解は、私だけではないはずです。私の場合、自分の曾祖母や祖父母、または周りにいたお年寄りを見て、なんとなく人生は80年ぐらいなのだと思い込んでいました。だからこそ、自分もそれぐらいは生きるのだろうと漠然と思っていました。たしかに私の曾祖母や祖父母の世代の人たちは、100歳を越えて生きる人は稀(1%程度)でしたので、私の感覚は正しいのです。しかし、平均寿命が急激なペースで延びていることを考慮に入れると、自分たちの世代から自分たちの子どもの世代にかけて、100歳まで生きる確率はかなり高いという結論に至るのです。
こういう話をすると、「いやいや、たとえ平均寿命が延びたとしても、私は身体が弱いから(病気がちだから)70歳ぐらいまでしか生きられないかな」とか「俺は太く短く生きるから」と述べる人が必ず出てきますが、医療の発達なども含めた長寿化ですから、どのような方でも100歳まで生きる確率は半分ぐらいあると考えた方が良いのです。
介護職員初任者研修を受けた生徒さんは、ここでひとつの疑問が浮かぶはずです。「平均寿命は長くなったとして、健康寿命は果たしてどうなのだろう?」と。ご安心ください。健康寿命も急激に伸び続けていますので、私たちはただ長く生きられる期間が伸びたのではなく、健康に長く生きることができるようになるのです。そうすると年金や人口減の問題も和らぐことができるはずであり(好き嫌いは別にして、より長く働き続けることができる)、この点は私たちにとって、大きな希望となるでしょう。
本書はそこからさらに論考を進め、それでは100年生きる人生をどう過ごすべきか?という問いに向き合います。80年しか生きられなかった世代の生き方と、100年を超えて生きる世代のそれが同じであるはずはありません。全く違うものになると考えて、計画をしておくべきだというのが本題です。これまでのように、学生として過ごしたあと(教育)は、社会に出て定年まで仕事をし、65歳ぐらいで引退して余生を過ごす、という3ステージの生き方は機能しなくなると著者は主張します。過去のモデルは役に立たなくなり、老いるとか若いという概念すら変わります。そして、新しい人生のシナリオ、ステージ、お金の考え方(稼ぎ方や使い方)、時間の使い方、人間関係(家族や友人)が登場するのです。自分は80歳ぐらいまでしか生きないだろうと漠然と思い込んでいた方は、ぜひ本書を読んで100年ライフについて考えてみてくださいね。