場所を変えることで

湘南ケアカレッジの介護職員初任者研修では、いろいろな場所に座ってもらうことにしています。もう少し詳しく説明すると、前日(もしくは前回)とは違う席にあえて座ってもらうことを勧めています。そのこころは、せっかく縁あって同じクラスになったのだから、いろいろなクラスメイトたちと接し、話し合える機会を増やしたいということ。人間はどうしても昨日(この前)と同じ場所に座ってしまう傾向があり、その周りに座っている人々も同じメンバーになりがちです。意識的に違う場所に座ることで、違った人々と知り合うことができます。研修が終わる頃には、全ての生徒さんたちがお互いに仲良くなる。そんなお手伝いができれば嬉しいです。


それでは、どのようにしていろいろな場所に座ってもらうかというと、2日目から5日目の講義が中心の授業では、朝、「昨日(先週)とは違う席に座ってみてください」と声を掛けることにしています。そして、6日目以降に実技演習が始まると、それぞれの生徒さんたちをグループ分けして発表します。2日目からグループ分けしようかと考えた時もありましたが、いきなりグループになるよりも、もう少し緩い感じで、いろいろな場所に座ってもらおうと思い、前述の声掛けをすることにしました。

 

いつも同じ場所に座りたいのに、と思われる方もいらっしゃると思いますが、それでもあえて声掛けをすることにしています。あとから卒業生に聞くと、「あの声掛けがあったからこそ、背中を押してもらえて、未知の席に座り、いろいろな人たちと知り合えた」と感謝してもらうことも多いのです。さらに実は私こそが、言われて初めて違う場所に座るタイプの人間であり、言われなければ同じような席に座って研修を過ごしてしまうかもしれません。いろいろな席に座り、いろいろな人たちと話してみたいという気持ちはあっても、恥ずかしいという感覚が先立ってしまうからです。誰かに背中を押してもらわないとできないことも、きっとあると思います。

 

環境を変えることには大きな力があります。自分の意思の力で自分を変えようと思っても難しいとき、環境を変えることによって、出会う人が変わり、それに伴って自分の考え方や気持ち、そして自分自身が変わることができます。ガラッと環境を変えてしまうことが難しければ、座る場所を変えたり、いつもとは違う道を通って帰ったり、違うお店に立ち寄ってみたりすることで、小さいながらも変化があるはずです。何よりも大切なのは、人は意識しないといつもと同じことを同じようにやりたいと思ってしまうものであり、だからこそ意識的に少しずつでも環境を変えてあげること。そうすることで、長い目で見ると、自分の人生にも広がりが生まれてくるはずです。