「生きてるだけで100点満点!」

女優・奥山佳恵さんの笑顔を久しぶりに拝見し、手に取ってみたところ、彼女の第2子である美良生(みらい)くんのダウン症について書かれたノンフィクションでした。自分の子どもがダウン症だと宣告されたとき、彼女が何を思い、夫や長男、そして周りの人たちと共に、どのようにしてその事実を受け入れてきたのか。芸能人としてではなく、ひとりの母親として、その心の本音が飾らない言葉で綴られています。生きているだけで100点満点だと思えるようになるまでには時間が掛かったようですが、今では起こったことはすべて良しと考えられるようになったことは、彼女と美良生(みらい)の輝く笑顔を見れば分かります。彼女が描いたイラストがふんだんに掲載されていて、とても可愛らしく、どこからどう見ても普通の育児日記にしか思えないから不思議です。


ダウン症とはダウン症候群の略で、体細胞の21番目の染色体が1本多く存在し、3本あることで発症します。たったの1本、染色体が多いだけなのです。ダウン症は先天性の疾患であり、知的障害や低身長などが認められ、今のところ治療法はありません。目じりが上がり、鼻が低く、頬が丸く、顎が未発達という特徴が見られ、そのためダウン症の子どもは顔つきが似てきます。ダウンさんという医師が発見した病気であるため、ダウン症候群と名付けられたが、著者の言うように、アップダウンのダウンのように勘違いされ、たしかにあまり良い名称ではありませんね。

 

ダウン症といえば思い出されるのが、私の息子が生まれたときのこと。生まれたばかりの子どもの手の平を見て、担当医が「もしかしたらダウン症かもしれません」と言われました。手の平にあるしわを見ると、親指と人差し指の間から一本の線が真横につながっているのを見て、これはダウン症の子どもによくある手相だという理由からでした。私は仕事柄、ダウン症のお子さんたちに触れてきましたし、ある程度の知識はありましたので、それならそれでいいと思えました。出産や子どもの誕生にあたって、そういうこともあるかもしれないと予感していた部分もあったからかもしれません。でも、自分の手の平をよく見ると、私も同じようにしわがあるではありませんか!

 

あとから調べて分かったのですが、実はこのしわはマスカケ線といって、かなり珍しい手相だそうです。珍しい手相なので、お医者さんからすると、確率的にダウン症の方を疑ってみるのは当然かと思いますが、私の手相が自分の子どもにも遺伝したということだけの話でした。この1件から、私にとってダウン症は身近なものとなり、ともすると、ダウン症の人たちに不思議な親近感を覚えるようになりました。彼ら彼女らは様々な障害や病気と闘わなければなりませんが、それは私も程度の差こそあれ同じであり、そして日々の生活の中で幸せや楽しさや愛情を掴むために、私たちは同じしわを手に持って生きているのです。