卒業生さんたちと話すこと

日曜日クラスの実技テストの結果発表を聞きに教室に足を踏み入れると、団体の来客がいました(お子さま2名含む)。1月短期Aクラスの卒業生たちが、クラスメイトの1人の壮行会を行うために集まり、その前に教室に顔を出してくれたのでした。ただでさえ人数の多い日曜日クラスに、卒業生さんたちが加わり、それはもの凄い盛り上がりと熱気の中、「全員合格です!」という小野寺先生の声が響き渡りました。2つの違うクラスのメンバーがこうして一堂に会するのも良いものですね。授業が終わって、日曜日クラスの生徒さんたちが帰られたあと、それぞれの卒業生さんたちと色々な話をさせていただきました。


卒業生さんたちと話すことは、とても刺激的ですし、勉強にもなります。介護職員初任者研修を受けていたときは話せなかったような、個人的なことも互いに話すことができますし、もちろん介護の世界や仕事の話もすることができます。1月短期Aクラスの皆さまは1月末に修了しましたので、2月からすぐに現場で働き始めている方もいれば、ちょうど就職先を探している段階の方もいます。これからぼちぼち仕事を探そうと考えている方もいます。その中でもやはり、現場でこんな利用者さんに対してこんな仕事をしている、こんな仕事上の難しさを味わっている、こんな喜びや感動があった等々、実際に働き始めている卒業生の話にはつい聞き入ってしまいますね。

 

印象に残ったことのひとつは、「介護の仕事をするようになってから優しくなったね」と子どもたちに言われたという話です。かつてはフィットネスジムでインストラクターをしていたそうですが、その仕事で苦痛だったのは、常にノルマや数字があり、利用者から友人知人を紹介をしてもらうように働きかける営業がつきまとっていたことだそうです。


利用者と話をするのも、相手から情報を聞き出し、紹介につなげるため。利用者の後ろには常にお金が見えていて、そこから逆算してやり取りが生まれる。こういう関係にストレスや後ろめたさのようなものを感じながら仕事をしていたけれど、今の介護の仕事は、そういう利用する関係ではなく、人としての会話やコミュニケーションがある。そこが大きく違うところだと感じたそうです。

 

実は私もずっと、こういったお客さまの後ろにお金を見なければいけない仕事をしてきたので、この感覚にはとても共感するところがあります。企業は利益を出さなければならないという命題のもと、ごく当たり前のように、お客さまから意図的にお金を引き出すことが善とされ、そこで働く人々にもそれが求められます。それができないのは甘いとか、会社に貢献していないと評価されてしまいます。


もしかしたら、ほとんどの社会人はそう信じてしまっているのかもしれません。だからこそ、お客さまや社会ともっと人間的なかかわり合いをしたい、と心の奥底では思いつつ、そんなことは綺麗ごとであり、自分には稼ぐ能力がない、向いていないのだと葛藤するのです。

 

でも、そうではないのです。介護の仕事のように、利用者と人として向き合って、人間的なやり取りが求められる仕事もありますし、むしろどんな仕事であっても、人とかかわる仕事である以上は、もっと人間的でなければならないのです。現場の人たちに、利益という目的から逆算した関係を強いてしまうことが間違っているのです。


はっきり言えば、経営の失敗を現場の人々に押し付けているだけの話です。それは私が自分の手で経営をしてみて初めて分かったことです。自分でやってみるまでは、それが素人の発想なのか、青臭い理想論なのかもしれないと思っていました。やってみて分かったことは、私たちはもっと人間的であってよい、人間的であるべきだということです。


もしかしたら、宮崎に旅立って施設長となる卒業生へのエールにもなるかと思い、ここに書きました。