たずさわる人々が好きだから

先日、修了試験が終わったあと、生徒さんたちと1時間以上話しました。15日間の研修を通い切った達成感とテストが終わった安堵感が相まって、介護や福祉にまつわることからそうでないことまで、たくさんの話をすることができました。その会話の中で、ある生徒さんから、「なぜこの学校を立ち上げたのですか?」と聞かれました。そのときは、「この研修が好きだからですかね」と答えましたが、その後、ひとりで考え直してみると、決してそれだけではないと思いました。なぜ今この仕事をしているのか、改めて考えるきっかけを頂いたことに感謝します。

 

私が湘南ケアカレッジをつくった理由は、最高の介護・福祉教育をひとりでも多くの方々に提供したいからです。今から15年ほど前に、介護職員初任者研修(当時のホームヘルパー2級講座)を受け、とても楽しく、学びも多く、少し大げさに言うと、自分の世界観が変わったような体験をしました。そういった体験を、ひとりでも多くの生徒さんたちに味わってもらいたいと願っています。素晴らしい教育を自らの手でたくさんの人々に届けたいのです。

 

そして、それだけではなく、この研修にたずさわる人々が好きだからだと思います。

 

私は大学卒業後に入社した会社を1年で退社し、2年間の軽い引きこもりの時期を経て(笑)、介護の研修を運営する大手のスクールに入りました。チャンスを与えてくれたことには今でも感謝しているのですが、その職場は今でいうブラック企業そのままでした。もはやひとりの人間の処理能力を超えた大量の仕事による圧力と、上司からのパワハラに近い言動に耐え、とても明日のことなど考える心の余裕もなく、なんとか今日1日を生き抜くことが全てでした。2年目に正社員となってからは、1日18時間働き、土日も授業は行われているので休みもほとんどない仕事漬けの日々を過ごしていました。

 

そんな中で、私の心のよりどころになってくれたのは、先生方であり生徒さんたちでした。当時、20代前半の右も左も分からない、介護の世界の知識も全くない私にいろいろなことを教え、あらゆる面で助けてくださった先生方に対する感謝はいつまでも忘れません。暖かい心を持った先生方と一緒に仕事をしていると、一時でも仕事の苦しさを忘れられるようでした。人間的に素晴らしい先生方がいてくれたからこそ、私はなんとか仕事を続けることができたのです。

 

事務所を抜け出し、教室に行って生徒さんたちと言葉を交わしたりすることも、私にとっては救いになりました。介護の世界を目指し、この研修を受けている生徒さんたちは皆、明るく楽しく、心優しい方ばかりでした。生徒さんたちの笑顔を見ると、たとえ舞台裏がめちゃくちゃであっても、提供している介護・福祉教育そのものは良いものだと信じられたからです。

 

そういえば、佐々木先生も授業の中で同じようなことを言っていました。介護の仕事をしていたとき、個人的にはいろいろと大変なことがあって苦しい思いをしていたけど、現場に行って利用者さんと接していると、いつの間にか日常の嫌なことは忘れられたと。お年寄りの笑顔が自分を笑顔にしてくれて、自分の笑顔がお年寄りを笑顔にする。介護職員が利用者さんを支えるだけではなく、利用者さんによって介護職員が支えられることもある。私たちはお互いに支え合って生きているのです。

 

私はこうして学校があって、授業が行われていて、先生方と一緒に仕事ができて、生徒さんたちの楽しそうな笑顔を見られるだけで幸せです。だからこそ、湘南ケアカレッジは100年続く学校を目指したいと思います。