やらないことの2つ目は、「大きくしない」ということです。つまり、むやみに教室を増やして、拡大しないということ。極端なことを言うと、湘南ケアカレッジは町田教室だけでいいと考えています。ビジネスモデル的には、できるだけ教室を増やしたいと考えている学校がほとんどだと思いますが(正直に言うと私も最初はそう考えていました)、湘南ケアカレッジはその逆を行きます。小さければ小さいほど良い。拡大したいという誘惑を振りはらって、できるだけ小さなままでいたいのです。
なぜ教室数を増やしたくないか、拡大しないかというと、両手で数え切れないほどの理由が思いつきます。その中で、私にとって最も重要なものは、生徒さんの顔を見ることができなくなるからということです。生徒さんと人間らしい関係を築くには、どれだけ私が飛び回ったとしても、2教室が限界ではないでしょうか。それ以上に教室数が増えても、どういう人が湘南ケアカレッジに通ってくれているのか、私は知らないまま終わってしまうことになるはずです。生徒さんたちと話をすることも、名前を覚えることも、その人となりを知ることもできません。
こんなにも素敵な人々が集まって、素晴らしい研修が行なわれているのにもかかわらず、その場に参加できないなんて、もったいない話です。私は先生方が生き生きと授業をし、生徒さんたちが楽しんで笑顔で参加してくれているところに、裏方としてちょこっと混ぜてもらうことに幸せを感じます。もし自分が現場から離れてしまうとすれば、それは本末転倒というか、私にとって学校をやる意味が感じられないということです。これは決して綺麗ごとではなく、経営をうまくやったり、利益を追ったりすることではなく、最高の福祉教育を提供し、そこにいる人々が良い関係を築き合える学校をつくることが私は好きなのです。
そもそも、教室の数がたくさんあることが何の得になるのでしょう。たとえばハーバード大学やオクスフォード大学を見て、「もっと手を広げ、たくさん姉妹校をつくって、何百人もの教授を雇って、全国展開して、世界中にキャンパスをオープンしたら、すごい学校になるのに」なんて誰が言うでしょうか?誰も言いませんよね。なぜこれらのブランド大学が拡大しないかというと、質が保てないからという理由に尽きると思います。
拡大するのは簡単ですが、携帯電話や衣服と違い、量産すると教育や授業の内容の質は必然的に落ちてしまうのです。かつて大手のスクールで、たった1年半の間で、5教室から20教室近くまで、教室を一気に増やしたことがある私が言うのだから間違いありません。もし学校としてのブランドを保つとすれば、大きくではなく小さく、広くではなく深く、勇気を持って向かわなければなりません。大きくなることだけが成長ではないのです。