10年後の未来(後編)

この高齢少子人口減少社会において、私たちにできることは、まずは知るということです。様々な問題を抱えることになるのは必然ですので、それがどういうことなのかを知ること。老いることについて、障害について、認知症について、死と向き合うことについて、介護保険の制度について、介護の技術についてなど、まずは知ることから始めなければならないのです。知らなければ、問題の本質が分からないばかりか、もしかすると何が問題なのかさえ分からないかもしれません。それぐらい、知るということには大きな力があるのです。

 

私も「介護職員初任者研修」を実施するにあたって、多くのことを学びました。特に、「死と向き合う人のこころとからだのしくみ、終末期介護」の単元の内容をつくるにあたっては、人間にとっては誰にでも訪れる死というものに向き合って考えました。子どもが生まれてからというもの、自分が死に向かっていっていることは常に実感していましたが、こうして死について考えることは今までありませんでした。祖父の死、親戚の叔父さんの死。誰かの死や身近な人の死につて考えれば考えるほど、最終的には自分自身の死に考えは至ります。そして最後に分かったことは、死を想うことは生について考えることだったのです。

 

湘南ケアカレッジにできることは、介護・福祉の教育をひとりでも多くの人々に届けることです。そうすることで、高齢少子人口減少社会の問題の解決にささやかながらでも貢献できると考えています。私たちの提供する「介護職員初任者研修」を受けてくださった生徒さまたちの中で、実際に介護・福祉の現場で活躍する人がひとりでも多く出てくると最高ですが、そうでなくとも、普段は全く別の仕事をしていたとしても、介護・福祉について知っているという人がいるといないとでは全く違いますよね。知ることで理解できるようになるということです。

 

先日始まった「介護職員初任者研修」の授業の中で、受講の動機を発表してもらう機会がありました。なぜ介護・福祉について学びたいと思ったのか、それぞれの理由を他己紹介という形で語ってもらいました。驚いたのは、半分以上の方が、「介護職員初任者研修」を修了して、修了証明書を手に入れた暁には、何らかの形で介護・福祉の仕事をしてみようと考えていると語ったことです。私の実感としては、受講生の2~3割ぐらいが実際に仕事をしてみたいと考えているのが普通でしたので、思っていたよりも案外多いのだなと嬉しく思いました。

 

これはこのクラスに特有のことなのか、それとも他のクラスでも同じなのか分かりませんが、ホームヘルパー2級講座から介護職員初任者研修に変わったことで、より真剣に学びたいと考える方が受けていただけるようになったと感じています。もちろん、ただなんとなくでも良いのですが(そこから何かが始まることだってたくさんありますから)、より明確な目的を持って集まっていただくとより大きなものが生まれるはずです。仕事のため、家族の介護のため、仲間をつくるため。ただ資格を取るだけではなく、その後、どんな良いことが待っているのか想像してみてください。そして、その良いことを提供する、または良いことが生まれるのをサポートするのが私たち湘南ケアカレッジの役割だと思います。